ヘルパーに対するセクハラ被害の実例と対処について
訪問ヘルパーの仕事は居宅へ訪問して行いますが、仕事中は利用者さんと密室で過ごすので様々な注意が必要です。
中でも女性の訪問ヘルパーが男性の介護高齢者の自宅に上がる際は、性的な被害に遭わないよう、気を付けなくてはなりません。
「性的な話をされて嫌な思いをした」
「実際に体を触られ、仕事に行くのが怖くなった」
ということもありますし、中には
「セクハラ被害に遭ったことを事業所へ伝えたが、まともな対応をしてもらえなかった」
と、心に2重の傷を負うケースもあり、ストレスで体調を崩し、セクハラをする利用者さんへの支援が嫌で仕事を辞めてしまうヘルパーもいるほど、事態は深刻です。
この記事では、訪問ヘルパーのセクハラ被害の実例を紹介しつつ、被害に遭った場合の対処について紹介しているので、もし同じような悩みを持つ人がいましたら、ぜひ参考にして下さい。
訪問ヘルパーに対するセクハラ被害の実例
どのような事態が現場で起こっているのでしょうか?訪問介護員のセクハラ被害の声を集めたので、こちらで紹介させていただきます。
実例1「一人暮らしの80代男性がサービス提供責任者のお尻を撫でる」
利用者は一人暮らしで、料理や掃除が本人には困難なため訪問介護を利用。
以前にも何人ものヘルパーがセクハラを訴え、利用者宅への訪問を拒否したため、サービス提供責任者が支援に入ることになった。
それまでも、何度かセクハラを辞めるよう口頭で伝えたが改善されず、ある日、サービス提供責任者の女性が支援に入って、掃除機をかけていたところ、後ろからお尻を撫でられた。
一瞬何が起きたか分からなかったが、わざとお尻を撫でたことを理解し、利用者へきつく怒ったところ、反省したのか今のところ行為に及ぶことはなくなった。
優しいヘルパーが入ると、またセクハラをするかもしれないので、現在もサービス提供責任者が支援に入っている。
実例2「58歳男性が女性ヘルパーの首元にキスをする」
利用者の男性は「半身マヒ」があり、ベッドから車いすへ1人では移乗することができないため、女性ヘルパーが抱きかかえて車いすに移乗します。
車いすへの移乗の際は、男性を抱き抱えなくてはいけませんが、抱き抱えると顔が近づくので、いつも首元に息がかかって「嫌だ」とは思っていましたが、何度目かの介助の時に首にキスをされました。
これまでも少し違和感がありましたが、このことで首元にわざと顔をもってきていたのだということが分かったのです。
その時は気が動転して、本人にきつく言えませんでしたが、すぐに管理者に電話で相談をして、その日のうちに管理者から注意をしてもらいました。
後日、女性ヘルパーに利用者の男性から謝罪があり、「もうセクハラはしない」と約束をしてくれたので、現在も支援に入っています。
実例3「76歳男性が卑猥なことをヘルパーに言う」
老々介護でご主人、奥様共に支援が必要なご家庭で、奥様が認知症のため、調理と家事の支援が必要でした。
女性ヘルパーが調理をしている時に、話好きなご主人が話しかけてきます。
世間話をしていたはずなのに、話がだんだん変わっていき、奥様との若い頃の性生活などをはじめ、その後も現在の奥様との性生活を話をはじめました。
女性の訪問ヘルパーは、最初のうちは相槌を打って話を聞いていましたが、段々と気持ち悪く感じ、黙って調理をしていました。
その様子から、女性ヘルパーが嫌がっていることを感じたみたいで、そのヘルパーに対して卑猥な話をしなくなりました。
どこからがセクハラに該当するのか?線引きは?
実際に働いていると分かりますが、コミュニケーションとして色々な発言をしたりする利用者もいるので、セクハラの線引きはとても難しいと感じています。
例えば、「スキンシップはセクハラに該当するのでしょうか?」
高齢者の中には変な意味はなく、単に手や背中や足をスキンシップのつもりで触ってくる介護高齢者も一定数います。
ですが、どのような場合でも「下心」があれば確実にセクハラですし、仮に下心が無かったとしても、「ヘルパーが嫌がっていると知っても止めない」「ヘルパーがその行為に対して不快に感じる」というのであれば、これは確実にセクハラです。
私たち訪問介護に携わるヘルパーは、直接、利用者に振れる機会も多い仕事なので、嫌なことは「嫌だ」と直接伝えることが大切です。
ヘルパーがセクハラ被害に遭った時のベストな対処は?
実際に被害に遭った場合は、どうするべきなのでしょうか?
上司に相談をする
訪問ヘルパーは、基本的には一人で支援を行いますが、個人で仕事を請け負っている訳ではなく、必ず間に事業所を挟んでいます。
ですので、まずはあなたの上司になる人に「どうしたらいいのか?」を相談するべきです。
最初はライトな感じで行為に及ぶ利用者も、最初のうちにちゃんと対応しておかないと、段々エスカレートするので、放置するほど危険になります。
ヘルパーに対するセクハラの問題は、ヘルパー個人の問題ではなく、訪問介護事業所として取り組むべき問題です。
なので、トラブルがあった際は必ず上司に相談して、対応方法を考えてもらいましょう。
その利用者への支援に入らないように変更してもらう
再び被害に遭わない為には、「その利用者の支援に入らない」という方法が1番簡単な解決方法になります。
利用者宅に行かなければ、卑猥な言葉を浴びせられる心配もない、身体を触られる心配もないからです。
ですが、被害者本人のためにはベストな解決法ですが、本質的な解決にはなりません。
何故なら、セクハラ行為に及ぶ高齢者は、ヘルパーを変えても行為に及ぶ可能性が高く、他に被害者を生む可能性があるからです。
これからの対処については、事業所全体で考えていかなければなりません。
同じ利用者に入っている他のヘルパーに話を聞く
セクハラに及ぶ利用者は、他の訪問ヘルパーにも同じような行為をしている可能性があります。
ですので、他のヘルパーが同じような被害に遭っていないかを聞いてみて、どのように対処しているかを教えてもらいましょう。
例えば、「卑猥な話をしてくる場合、無視して嫌だ言う雰囲気を出せばそれ以上言わなくなった」など、具体的な対処の方法を教えてもらえる可能性があります。
ちゃんと対応してもらえない場合は事業所の変更も
普通は相談すれば、問題解決に向けて動いてくれますが、上司に相談しても、ほとんど何もしてもらえなかったという話も聞きます。
もし、納得いくような対応をしてもらえないのであれば、他の訪問介護事業所に転職することも検討するべきです。
訪問介護事業を展開する企業は他にも数多く存在します。
ですが、運営する企業の中には、大手でしっかりしたマニュアルのもと黒字経営で安定した運営ができているところもあれば、小規模でまともな運営すらできていない赤字の訪問介護事業所もあるのです。
実際、介護福祉事業分野において、最も倒産件数が多いのは「訪問介護事業」です。
つまり、各事業所の経営状態の良し悪しに開きがあるので、訪問介護で働くなら経営状態の安定している大手の事業所を選ぶ方が賢い選択とも言えるのです。
どんな状況に置かれても、最終的には、自分の身は自分で守らなければなりません。
もし、身の危険を感じる程の事態が自分の身に降りかかっているなら、仕事の途中でも一度家から出る。
そして、事業所へ連絡を入れ、「どうすればいいか?」の指示を仰ぐようにしましょう。
セクハラには凛とした態度で立ち向かう。1人で解決をしようとせず、誰かに相談をしましょう。